終活とは
平均寿命が伸びる一方で、核家族が家族形態の中心を占める状況が続く中、ますます進行する少子高齢化の波は改めて人生の終末期をどのように生き、そしてどのように最後を迎えるかという問いを人々に投げかけています。
後継者がおらずお墓のことや自分の葬儀が心配、または子供など家族にできるだけ迷惑をかけずに、自分の葬儀手配は生前に自分で済ませておきたい、そういった不安や思いをいだく人が増える中、週刊誌『週刊朝日』から生まれた終活という言葉が急速に世の中に広まっていき、2010年には新語・流行語大賞にノミネート、2012年には同トップテンに選出されるなど、シニア世代、シルバー世代を中心に、人生の終盤の部分をどのように締め括るかの準備活動として終活は定着してきています。
そして、終活は単なる事前準備から、人生のエンディングを改めて見つめ直し、より自分らしい最期に向けて、自分らしさについて今一度考え、本当に自分らしいエンディングに向けて残りの人生をより自分らしく生き、自分の最期を自分で決めるための活動へとなってきています。
エンディングノートなどを使って、人生を振り返りながら万一の時には連絡をしてほしい人のリストを作ったり、こんなお葬式にしてほしい、お墓はこんなところが希望、といった様な葬儀関連の希望をまとめたり、また財産をどうしてほしいかといったことの考えをまとめることも終活における大切なことがらのひとつです。
人生の総棚卸しとも言える終活、エンディングノートの項目にそって書きだしてみることから始めると、それまで気になっていたことがいろいろと整理できてくるかもしれません。
現代終活事情について
生前、自分のための葬儀やお墓の準備などを自身で済ませておく、ということが活動の主だったものでしたが、近年では、亡くなった後だけではなく、万一寝たきりになってしまったり、自分の意思が伝えられない重篤な状態に陥ってしまった場合などに、どのような介護を希望するかといった内容であったり、また財産分与の希望をまとめたりといった法的側面の準備としての側面も含まれてきています。
各地で終活をテーマにしたイベントなども開催され、そこでは単に情報を集めるだけではなく、実際に終活の活動をはじめてみたり、普段はなかなか体験できない入棺体験など、葬儀に関する様々を実際に体験できたりと、まさに参加していろいろと知ることのできる終活も増えてきています。
自身の最期について考え、そのことを通じて改めて自分というものを見つめ直す機会となっている終活。実際、エンディングという、今はまだ見えない先のことを考える終活を通して、今の自分を見つめ直し、今をよりよく生きることにつなげていけるのが終活です。
長い人生の棚卸し、いままで歩んできた長い道のりを振り返ると、やはりそう簡単にまとまるものではないかと思います。
そして、そのようなことをまとめるために活躍するのがエンディングノートです。エンディングノートを活用して終活を進めていく中、葬儀やお墓のことはもちろん、万一寝たきりになってしまった場合の希望から、保険や財産など重要な内容もエンディングノートにまとめていきます。
他に、エンディングノートでまとめる内容としては、自分の生い立ちから、万一のとき知らせてほしい連絡先一覧なども含まれますが、そういったことの整理から、自分史まとめにつなげることができるかもしれません。
終活相談の仕方
終活を、自分の人生のエンディングをどのような形にするか、という整理のステップととらえるならば、その先に遺言書の作成ということが含まれる方も少なくないかと思われます。
法的に有効な遺言書の作成のためには専門家への相談(内容検討を含む相談から始めて、原稿作成と正式な遺言書の作成であれば弁護士、遺言書の原稿作成と正式な遺言書の作成の依頼であれば行政書士)が確実ですが、もっと漠然とした質問や相談から始めたいという需要も多く、どこから始めるか、何から手を付けるかなど相談にのってくれる各種社団法人(特定非営利活動法人/NPO法人や各種企業など)も全国にいくつも展開されています。
終活を進める中で、考えを整理しながら、同時に自分にとってはどこに相談するのが最も適しているのか、を考えていくことも大切です。
また、周りのご友人や親戚の方など身近で話しやすいところから、終活についての情報交換を始めてみるのもよいアイデアでしょう。聞いてみたら実は終活に興味を持っていた、であるとか、あるいはもう終活を始めている、という方も意外と少なくないかもしれませんし、それぞれが終活イベントなどで聞いてきた情報を交換したり、案外身近なところから自分にぴったりの終活情報を得られるかもしれません。
終活を通じて、エンディングノートなどで考えをまとめていく中で、自分にとって最も気がかりなことは何なのか、を探してみてください。それがご自身の終活テーマにもなってきます。
男性の終活
また、終活やエンディングノートそのものへの関心は必ずしも高くなく、終活への取り組み開始もややゆっくりペースの傾向が見られる男性陣ですが、所有財産や負債、遺産の用途、また遺言(エンディングノートそれ自体は終活ノート的な性質のものであり、法的拘束力はありません)に連なる類の内容となると、男性の方が記録に対する意識も高いようです。一家を長年経済的に支えてきた責任と思いが、人生の総棚卸しとなる終活において、そういった事柄をエンディングノートに記録することを後押しするところもあるようです。
一方、中高年男性に見られることも多いという家族への無関心と、長年にわたるその蓄積は、やがて夫婦別々のお墓が望みだという女性の声につながってきてしまうこともあるようです。出逢いの時と同じく仲睦まじく、とまではいかなくても、人生を共に歩んできたパートナー同士、しめくくりの終活を振り返りの楽しい共同作業として、忙しさの中に置き去りにしてしまった、共に過ごす時間を取り戻すために使ってみるのもよいのではないでしょうか。
女性の終活
また、例えば身内の介護体験などを通じて、人の「老い」というものを身近に感じることもそのひとつと言えるでしょう。
とりわけ、子供の頃から見てきた何でもテキパキとこなす母親が、いろいろな身の回りのことをできなくなっていく姿を目の当たりにすると、嫌でも「老い」というものを感じさせられ、将来の自分に重ねて見えてしまう部分も少なからずあるかと思います。
都心部を中心に核家族化が進んできてもなお、家事や介護といったものは女性の負担となってしまっている場合もまだまだ多く、子供の独立で家事に追われる毎日からの解放と、次にすべきことを考えるタイミング、身内の介護が必要になるタイミングなど、女性の方が何らかの形で、これからの暮らしや終活といった先のことを意識する機会に早くめぐり合う可能性が高いようです。
そのようなことからか、各種調査を見ても終活に対する意識や関心は女性の方が高く、エンディングノートに実際に考えをまとめ始めて終活を開始する時期など、女性の方が早い傾向が見られます。
平均寿命が男性よりも長い分、自分が最期まで面倒を看なければ、との責任感から終活への意識の高さが生まれているところも少なからずあるのかもしれません。
お墓のことはどうするのか、後継者がいないことを考えて永代供養にするのか、永代供養でも夫婦墓という選択をするのかなど、確実に必要ではあるものの、正直いつのことは分からず、準備がついつい後回しになってしまう終活。
そのいつか分からないことにきちんと備えておこう、と終活を意識しはじめるのは、女性ならではの現実感と家族のために備えておく心配りからくるものでしょうか。
終活と家族‐家族への終活相談‐
確かに平均寿命から考えると、何か特段のきっかけなどでもない限り、終活をしなければと意識はしつつも、早々と何か具体的に開始することはどうしても二の次になってしまうかもしれません。
では、その終活の目的はそもそもどのようなものなのでしょう?
終活を始める場合の多くは、後継者がいなく墓守となってくれる人がいないので自分で何とかしておきたい、もしくは自分の葬儀やお墓のことで子供にできるだけ面倒な思いをさせたくない、といったように、あたかも何か片付け物を自分で済ませておくというような気持ちで取り組む方も、少なからずいるのではないでしょうか。
「ぼっち終活」などとも言われたりしますが、独りで、もしくは夫婦だけで終活のすべてを決めて、子供は(亡くなられた)後でその内容だけを知る場合も決して少なくありません。
ただ、たとえ親世代側として何かしら迷惑をかけたくないといった気遣いからであったとしても、残される子供世代側としては、先に相談しておいてほしかった、話してくれればよかったのに、という意見が実際には大半のようです。
終活それ自体は自分のために自分でするものですが、終活で用意するのは、いわばお願いごとです。
子供であれ、親戚であれ、あるいは親しい誰かであれ、そのお願いごとの中身は一度ゆっくり話してみると良いかもしれません。
話すことで、お互いに見えていなかったところが見えてきたり、自分自身の思いの中に新たな発見があったりと、新しくエンディングノートに書き加えたいことも出てくる可能性もあります。
人生の総棚卸しである終活です。ぜひ、これまでの人生の振り返り作業を、これからお願いごとをしておきたい人と一緒に行い、想い出話をしながら、楽しくエンディングノートを作り上げていってください。
また、それらの一連の作業によって、これから先の人生をどう生きるのか、よりはっきりと見つめることができるかもしれません。