手持ち花火が教えてくれること

お盆休み、帰省してゆっくり過ごした方、いつも通りお仕事だった方、またいつもより少し人の少ない街中でなんとなくのんびり過ごした方、いろいろなお盆休みシーズンだったのではないでしょうか。それでも、どんなに働き方やライフスタイルが多様化してきても、この時期に自分へと受け継がれてきた命のつながりを大切に思う慣習は、今の季節を私たちに感じさせてくれるもののひとつかと思います。

 

さて、お盆休みと言わず夏休みを通しての風物詩といえば花火がありますが、一昔、いえ、二昔かもっと前まででしょうか、よく家の前や近くの公園で、買ってきた花火を家族や友達とやりませんでしたか? いわゆる手持ち花火は今でもスーパー、コンビニやホームセンターなどで売られていますが、都市部を中心に、さて、どこでやればいいのだろうか、と考えてしまうことが昨今多いように思います。

 

ルールに従って、というのはもちろんですが、そのルールも場所により様々な様で、詳しくは都道府県の条例と市区町村の条例、それに実際に花火をやろうとしている場所の管理団体等が定めたルールをまず確認する必要があります。それに、言うまでもなく人に迷惑をかけてはいけませんので、定められたルールに従った上で、尚且つ時間や音、煙などにも十分気を遣いますが、先ほども書いたライフスタイルの多様化のためか、この『迷惑をかけない』調整が実際のところ少々難しくなってきたように思います。

 

昔は夕食後、暗くなってきてから、家の前などで今より気軽に手持ち花火が出来た様に思いますし、ご近所とも何となく一緒にやったり、たまたま一緒に持ち寄った花火をやったりと、思いがけず楽しいひと時を過ごした夏の記憶がある方も少なくないかと思います。そしてそこは、親が子供に火の扱いや、火の危険さを学ばせる場でもあったかと思います。楽しい遊びを通じて、しかしながらその場で厳しく教わるそれらは、ただ言葉で教えられるものよりもずっと記憶にのこりやすいものだったと思いますし、時には熱い思いをしながらも、大怪我につながることなく練習体験ができる場だったのではないでしょうか。

 

またもうひとつ、それは袋に入った手持ち花火と水の入ったバケツ、それに虫よけとロウソク、たったそれだけのものが、家の前という何でもない空間を、その時だけ何かしら途轍もない楽しい遊び場に変えてくれるということです。特別な場所や空間は、必ずしもどこか遠くまで出かけていかなくても、目の前にある日常のありふれたところにでも、ちょっとしたものでつくり出すことができる、そのひとつのお手本なのではないかな、と思うのです。

 

夏に教わる大事なこと、楽しいこと、そんな記憶を次の世代にものこしていくことができれば、と思います。

 

終活支援サイト『のこす記憶.com』がお届けする『のこす記憶.comコラム』では、日常生活の何気ない一コマから、のこし伝えていきたい記憶を不定期更新で綴ってまいります。

 

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