Rockをもて仏教す Part9

ロックの歌詞から面白いなあと感じるところを切り取って、そこだけ勝手に仏教解釈をしてみます。今回はバンド名からして仏教的なNirvanaです。まさにグランジでありすごい人気ありましたが、私にはあまり来ませんでした。でもいくつか好きな曲ありまして、今回はBreedです。代表曲の1つでしょう。
 
Even if you have
Even if you need
I don’t mean to stare
We don’t have to breed
We could plant a house
We could build a tree
I don’t even care
We could have all three
She said
 
これは当時の奥さんだか彼女との間のことなのだと思うのですが、絵に描いたような幸せな家庭に対する複雑な思いが見て取れます。歌うカート・コバーンは幼い頃から厳しい家庭環境であったようです。子を産み家を建て、そこで皆で暮らすんだということに憧れながらも、現実としてそれに反発する思いなのでしょう。ロックは葛藤を心から叫ぶから響いてくるものなのだと再確認させられる曲です。
 
自分の心というものは、自分でありながらも簡単に流れを変えられるものではありません。流れと申しましたが、まさに仏教では心は川の流れ、とくに濁流のような絶え間のない激しさに譬えることがあります。本来の自分の思いすら掴むのが難しいのが心です。だから瞑想をして心を静め、本来の自分をまじまじと観察しようと修行をするわけです。ロックというのは、そういう濁流を前にしての苛立ちの表象とも言えるかもしれません。
 
ちなみにNirvanaとは涅槃のことで、サンスクリット語で煩悩の火が消された状態を意味します。煩悩とはすなわち迷いのことですので、上記のような迷いがなくなった状態がバンド名になっているわけです。バンド名と曲の内容には随分と乖離が見られますが、Nirvanaといは名には、安らかにありたいというカートの願いが込められているのかもしれません。そして、今はきっと安らかになっていることでしょう。
 
 
善福寺 住職 伊東 昌彦

 

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