本質は心であり命

緊急事態宣言が再度発出されまして、飲食店では午後8時以降の営業が出来なくなっております。その補償金が1日6万円出るそうですが、お店の規模によって効果はまったく異なるようです。来客も多く、家賃や人件費の負担が比較的大きい店舗では、6万円では足りないことでしょう。一方、たとえば夫婦で経営している居酒屋等では、通常営業よりも利益が出てしまうようです。飲食店はコロナ蔓延以降、どこも営業不振ですので、補償金で儲かることは結構なことだとも言えますが、本来必要なところに補償が十分されていないという実情に触れますと、政府の判断に不安を覚えてしまいます。 
 
ところで、戦前戦時中には国体という言葉がよく聞かれたそうです。私は意味については門外漢ですが、国としての本体というか、根本的なあり方を指していたのだと思われます。この国体を守ることが何よりも大切であるとされ、国民もそのために動員されたのでしょう。場合によっては、国民一人一人の命よりも、実体性のない概念が優先されていたとも言えそうです。時代の事情が複雑に絡み合ってのことですので、ひと言で評価をすることは出来ませんが、もし人命が軽視されていたことがあったとすれば、非常に残念なことだと思います。 
 
今、新型コロナウイルスと対峙しまして、もちろん国体という概念が出てくることはなく、時代も思想も異なるわけですが、国のあり方を人命に優先している気配を政府から感じずにはいられません。経済を止めるなと言いますが、経済は本来、経世済民です。日本は経済立国ではありますが、国や経済はもとより人のために存在しているということを忘れないでほしいものです。仏教では国や経済であっても、それは本質であるとは考えません。あくまでも派生的なもので、本質は心であり命です。時代の転換期に臨みまして、大切なことを見抜く力を養っていきたいと思います。 

 
 

善福寺 住職 伊東 昌彦

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