黒電話

携帯電話の普及により、今では家には固定電話はない、というご家庭もめずらしくはなくなってきているかとも思いますが、かつてはどこのご家庭にもあった黒電話、指が懐かしさを覚えているよ、という方もたくさんいらっしゃるかと思います。

 

一口に黒電話といっても歴代いろいろありますが、いわゆる601形、601-P形と呼ばれるものが2002年までは生産が続いていた機種であり、新規設置も可能なものでした。1985年(昭和60年)の日本電信電話公社民営化(日本電信電話株式会社(NTT))と、それに続く第二電電株式会社(現 : KDDI)をはじめとする「新電電」の事業参入が可能となったことは、利用者に対して端末設備を1社が独占的にレンタル提供する形式を、技術基準適合認定をクリアしている端末であれば自由に選べる形へと変化させ、黒電話が徐々に姿を消していく大きなきっかけともなりました。

 

ダイヤルを回す黒電話だと、電話をかける相手の番号に0や9がいくつも入っている時、単純にダイヤルの戻り時間がかかることから、ダイヤルを回す時間もかかってしまい、急いでいる時などちょっともどかしく思うこともあれば、反対に1や2が多い番号だと妙に早く電話をかけることができたり、と、指や耳が覚えている懐かしい記憶のようなものを感じます。尤も、ダイヤルを回すということ自体、経験のない世代も増えてきていますが、こんなある種の機能的制限からくる時間の流れの緩やかさの様なものを、時にはのこしておく良さというものもあるのではないかな、とデジタル化の時代に敢えて思うことしばしばです。

 

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